百名山

百名山2座目:富士山須走口~Rising SAN~(09.07.19)

男たるもの人生で一度は日本一に輝きたいもの。
それを誰でも物理的に叶えることができる場所・富士山。

この日のために走りこんで体を鍛えてきた。妙義の鎖場で度胸もつけた。
俺たちの実力が日本一に通じるか確かめる時だ。
積み上げてきた努力を信じ富士あざみラインを駆け上がる。

景色のいい場所だしライフワークである夜明けを拝んでから山頂を目指すとしよう。
こうして俺たちのRising SAN(昇る太陽/登る山のダブルミーニング)は始まった。



早朝の5合目駐車場。眼前には山中湖を見下ろす壮大な景色。
あざみラインは天の道を征く道路だ。

駐車場は満杯で止めきれない車の路駐が延々と続く。
自分達も前日入りしたのも関わらず路駐組となり5合目まで1時間程歩いてきたのだ。

残念ながら山頂は雲に覆われている・・・
受け入れてくれるかどうかは行ってみないとわからない。いざ出発!

須走口の入り口には山小屋が商店街のように並び賑やかな雰囲気。

そして商店街エリアを抜けるとひっそりとした須走口のスタート地点へ。
ここから標高差約1700mの登りが始まる。



最初は樹林帯に覆われていて景色のない登山道が続く。

道中にはこんな具合に登山道の名称、色分け、
登山者を勇気づけるコメントが書かれている看板が等間隔に並んでおり整備が行き届いている。

今回の富士登山には小ネタとして気圧変化を可視化する定番アイテムを用意。
ポテチの進化をお楽しみください。

やはり標高の高さゆえ息は上がりやすいようで
あちこちにダウンした登山者の屍が転がっている。

同期は本気を出しているのかスーパーサイヤ人状態。
実に頼もしい。

ふざけた写真を撮りながら歩いていたらいつのまにか6合目へ到着していた。




小屋の看板犬が出迎えてくれるので戯れるワタクシ。

へぇ、富士山にも自販機あるんだーと眺めて値段を二度見。
下界の二倍・・・だと?これが噂の富士山価格ってやつか。

6合目を過ぎると森林限界を迎え樹林帯が無くなる。
かといって景色までは良くなってくれないのが悔しい・・・
けど未知の領域の足を踏み出すワクワク感は止まらない!

隣の登山道を歩く人々。
離れて見ると結構な斜度を登っていることが分かる。

7合目・太陽館に到着。標高は3000に届こうとしている。
このあたりからなんだか身体に違和感を感じ始める。
頭が痛いような・・・気持ち悪いような・・・これ高山病ってやつ?

ゴルゴに促されるまま酸素を吸引してみるが症状は全く収まらない。
酸素で良くならないんだから高山病じゃないよね!?
と、ポジティブに解釈し先へ進む。



登山者が延々と列をなす。まだまだ山頂は遠そうだなぁ・・・

ここで登山道脇に残雪が現れる。夏なのに雪があるという事実に驚く。
ホント山は未知の世界が広がってるなぁ!

このあたりから確実に足取りが重くなり同期に置いて行かれるようになる。
頭痛と吐き気がはっきり表れてもはや高山病であること認めざるを得なかった(泣)

ポテチは第二形態に進化。
俺の内臓も今こんなになってんのかな・・・

俺も頂上で煌めきたいよ・・太陽の輝きを感じ取りたいよ・・・
気持ちとは裏腹に天候と症状は悪化してゆく。

雲の中に突入すると症状はさらに重くなり数歩歩いて立ち止まるを繰り返す状態に。

杖を支えにしないと立っていられない。
例えるなら風邪をひいた状態or二日酔いの状態で運動させられてるような辛さ。
高山病の前に人はあまりにも無力だ。

気合で8合目・3261mの江戸屋に到着。雲は霧雨となり体を濡らし始める。
ニューアイテムのレインウェアを着込んで対処するも気分は沈みもう上を向くことはできない。

ポテチは第三形態に進化。登頂?破裂?ギブアップ?
どれが一番早いだろう。

天候は更に激しさを増し砂粒の混じった暴風雨が顔面に叩きつけられる。
歩けば頭痛が悪化し止まれば風雨によって体温が奪われる進退窮まる状態。

自分は何やってるんだ?
なぜこんな辛さを味わってるんだ?
俺にはまだ早かったのか?
このまま死ぬのか?
心が折れそうになる。

『いやダメだ、、、まだ諦めんな。。。まず先に進まなきゃ・・・生きて帰れないぞ!!』
自らを奮い立たせ、頭痛・体温・精神を必死で制御しながら濃霧の中を歩き続けた。

どのくらい歩いただろうか。
目の前に鳥居が見える。とりあえずあそこまでは頑張ろう。

目の前の石碑には【富士山頂上浅間大社奥宮】の文字。
さんちょう・・サンチョウ!?
やった・・・登れたんだ・・よかった・・!!
ここがじゃなかったらもうマジ無理だったよ・・・一人で浸っていると

『ヨウ!オソカッタナ!』

やかましい声が頭に響く。
先に登頂していた同期がハイテンションで近づいてきた。
なんでこいつこんな元気なんだよ・・・高山病にはなっていない様子。
同じトレーニングしてきたのにこの差が出ることが少し悔しかった。



とりあえず山小屋内で休憩。雨具と防寒具着ているけど寒くて震えが止まらない。
なにか体を温めるものはないのか・・・

味噌汁!?500円!?安い!!!高山病は金銭感覚も狂わす。
極限の状態で飲んだ味噌汁は人生で一番旨かったのは言うまでもないだろう。

ポテチ最終形態。お前も破裂せずよく頑張ったよ。
さすがに食べる余裕はなかったけど袋の膨張っぷりに少しだけ笑みがこぼれた。

もう動きたくなかったけど小屋閉めの時間が近づいてきた。
このまま休憩してても体力の回復は見込めないだろう。
味噌汁とポテチからパワーを貰った今こそ動くとき。
意を決して暴風雨の中下山を開始した。

下山中は写真も撮らずひたすら目の前に一歩に集中していた。
我に返った時には目の前には砂地が広がる。
7合目の砂走りまで戻ってきていたのだ。

ここは下山専用&ブルドーザー用の登山道。
砂のクッションで膝の負担を小さくでき1.5倍の歩幅で勢いよく歩ける。
靴の中が砂だらけになるのがデメリットだけどどんどん加速していくのが面白く
最終的にはダッシュできるほど体調が良くなっていた。
動けなくなった原因は体力が無かったのではなく高山病にあったようだ。

ひどい目にあったけど
最後はなんだかんだ楽しんで須走口まで戻ってくることができた。

車道を歩いて路駐した車へ無事帰還した。
はじめての富士登山は人生で一番辛い瞬間を更新した。
生きてて死を覚悟したのは初めかもしれない。山の恐ろしさの片鱗を味わった。

最高地点の剣ヶ峰は取れなかったけど火口に立てば一応登頂とはみなされるそう。
登れはしたものの高山病対策、そして装備の甘さが浮き彫りになった。
これから山を続けるにあたり俺たちはどうすべきなのか?
麓の温泉で反省会は夜まで続いたのだった。

ルートレビュー

難易度:C
流石日本一の山だけあり整備の行き届いた登山道と
ありすぎる案内板のお陰で危険個所はほぼ無しです。
とは言え天候&体調次第で体感的な難易度が変わってしまう所が富士山の恐ろしさです。

体力度:B
標高3716m 標高差1746m 平均斜度17.2°
登り6:55(5.9km) 下り3:02(6.1km)
距離的にはそうでもないですが斜度と標高があるためかなり体力は要求されます。
悪天候の場合更に難易度が上がるため素直に引き返したほうが良いでしょう。

展望:D
五合目付近では山中湖の展望があったものの7合目以降は暴風霧雨のため視界ゼロ。
天気が良くても基本的に登っている時の景色に変化がないため飽きやすく感じるかもしれません。

総評:D
富士山に4つある登山道のうち樹林帯から高山帯への変化を楽しめるのは須走口のみ。
駐車場問題・人の多さ・悪天候・高山病など不確定要素がつきまといますが
全ての条件がそろった時には素敵な体験をさせてくれるはずです。

締めの一言
試合に勝って勝負に負けた。必ずリベンジする。

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