二百名山

二百名山1座目:妙義山~少年時代の謎を解け~(09.04.04)

登山を趣味とするなら誰もが気になる存在・・・富士山。
やっぱ男なら行かなきゃダメっしょ?と同期と盛り上がり今夏に登る計画を立てた。
週何度か一緒にランニングをして体づくりに勤しんだ08年の冬。

次の春が訪れ、山へ挑める時期となったため
同期からトレーニング登山として提案された山が妙義山。

その名には聞き覚えがあった。
少年時代群馬の安中に何度か来たことがあったのだ。
奇岩連なる威圧的な山容。そして山の真ん中に小さく書かれた白い【大】の文字。
人を引き付ける要素満載の山で興味深々で眺め続けた記憶がある。

・・・あの山か!
同期から名前を聞いて上記の記憶が一気に蘇った。
百名山ではなく二百名山にカテゴライズされるようだがそんなことはどうでもいい。
富士山への前哨戦、そして少年時代の謎を解き明かすため
春の陽気につられて俺たちは旅立つのだった。



スタート地点となる道の駅みょうぎより眺める妙義白雲山。
これだよこれ。山体の強烈なインパクトは時代が過ぎても健在だった。

真ん中に小さな大の文字があるのがお分かりだろうか。
あれが天然なのか人工なのか山肌が削られているのか何かが置かれているのか
そもそも何を目的としたものなのか・・・確かめに行くんだ!

妙義神社の荘厳なゲートに身が引き締まる。
これから始まる試練を暗に物語っているようだ。

案内板を発見。山頂までは・・・え、上級コース?
初心者の自分達が行っていいものか若干不安になるのだが
『イケるっしょ!』と早くもクライマーズハイに侵されている同期は突き進む。
樹林の登山道を暫く歩いていると

いきなり鎖場の洗礼。
まだこのくらいの斜度なら楽しんで越えられる範囲だ。
落ち葉でスリッピーな道と10m前後鎖場が交互に現れる。

登山道を一時間ほど進むと正面に現れたのは・・大!
ようやく近くで見れる時が来る。少年時代の謎があと少しで解けるぞ!
その正体は・・・

ただの看板だった。
天然ものでもなく岩に掘られたわけでもなく無骨な人工物。
ちょっと少年時代のロマンを壊された気がしたけど・・・
正体が知りたかったし満足さ。
というかこの時点でまだ登山靴買ってないじゃないか俺・・・よく死ななかったな。

【大】からの景色は抜群!
真下の道の駅がかなり小く見える・・もうこんな標高登ってきたのかと驚く。



謎は解けたので次は山頂を目指そう。
大を背にして登山道を進む。

そして辻という分岐点に到達。ここから一般ルートと上級者ルートに分かれる様子。
【キケン上級者コース】と書かれたペイントの少し先には

垂直に向けられた矢印とともに虚空から鎖が垂れ下がっていた(唖然)
俺『なんだよこれアクションゲームかよ!無理じゃね?』
同期『イケルッショ!!』
クライマーズハイはいうことをきかない(諦)

とりあえず行けるとこまで行くか・・・仕方なく鎖に手をかけ登り始める。
かなり高度感があり手膝が震え始めるが恐怖を押さえつけ三点支持を意識して登っていく

一つ目の鎖をクリアしたところで広い空間が現れたので中へ入ってみる。

そこには妙義神社・妙義大権現の奥の院がひっそりと佇んでいた。
『無事に下山できるよう力を貸してください』と手を合わせ、さらに歩を進める。

後で調べて分かったのだがここまでの道は鎖の続く難路なので
お参りできない人達のために妙義大権現の『大』の字を山腹につくり
麓からでも手を合わせられられるようにしたそうだ。
つまりこの奥の院こそが大の字の本体。少年時代の謎がより深い意味で理解できた。

稜線へと出る見晴らしに差し掛かる最後の鎖場。
岩を右に回り込むように鎖が垂れ下がっており鎖の右側は完全に切れ落ちている崖となっている。
当然手を滑らせたら命はない。
俺『ウソだろ・・こんなところ登るのかよ・・』
ここが最大の恐怖ポイントで進み方が分からず怖気づくが
同期『イケルッショー!』
完全にキマっている奴を止めることは不可能。
勇気を振り絞り震える手で必死に鎖を手繰り寄せた。

見晴らし到着・・・やっ・・たぞ。一息ついて周囲を見渡すと
裏妙義の向こうに残雪の浅間山が佇む。

そしてすぐ下には地層を切り刻んだかのような妙義の山肌が見えた。
『すげぇ・・・』自分達が今凄い場所にいること、
そしてここまで自分の力だけで登ってきたことが実感でき
体の震えが別の意味に変わった。



絶景に力を貰った俺たちは恐怖など吹き飛んでいた。
ここから先は絶景と奇岩の稜線を突き進む!
まずは玉石をトラバースして・・・

背びれのような岩を攻略して・・・

絶景ポイントの大のぞきへ!
正面には断層を称えた天狗岳

振り返ると歩いてきた稜線が見えた。
しかしよくこんなところ歩けてるものだ。
登山道を整備した方々には感謝しかない。

大のぞきからコルに降りるための長大な鎖。
見た目もエグイがこのあたりまで来ると慣れてきて楽しさしか感じなくなっていた。
改めて見返すとよくこんなとこバスケットシューズで降りれたなと思う。

タルワキ沢のコルに到着。
ここまでくればゴールは目の前。

ゆるやかな尾根を登ると・・・

妙義山最高峰の相馬岳踏破!・・・同期だけ。
まだこのころ自撮り好きじゃなかったんよなぁ・・・今更ちょっと後悔。

山頂では緊張感と恐怖から解放されてどっかりと座り込む。
俺『最初は無理だと思ったけどなんとか行けたなぁ・・』
同期『ダロ~?ヤレバデキルンダヨ~』
この言葉には少し感銘を受けた。
壁を作っていたのは自分だったのだ。
クライマーズハイになると見えることもあるんだな。

さて、頑張った後は飯だ!
トリプルコンビニギリで登頂を祝うとしよう。

弁当を用意してきた家庭的な同期。
二人で苦労を語りながら食う飯はこの日一番幸せな瞬間だった。



あとはひたすら下山するのみ。
落ち葉の多い緩めの斜面がずっと続く。
緊張感から解放されはしゃぎだす同期。

そして白雲山と金洞山の分岐に到着。
同期『コノサキモイッチャウー?』
俺『いやさすがに体力残ってないし昼過ぎてるしもう無理だろやめようぜ・・・』
クライマーズハイを抑えることに成功。

後で知ったのだがこの先の金洞山に登るためには
60mの垂直の鎖を登る妙義最大の危険個所『鷹戻し』を攻略せなばならない。
満身創痍の状態で行ってたら・・・命は無かったかもしれない。

ここからは一般ルートに戻る。
平坦な木道の安心感よ。

一般ルートにも二か所ほど展望所アリ。

そこからは登頂を諦めた金洞山の姿。
もっと実力をつけてからまた来よう。

無事道の駅に帰還し歓喜の雄たけびをあげる野郎共。
改めて麓からみると物凄い高さだ。あの頂に立ったことが信じられなかった。
降りてからもじっと山頂を見つめながら、極上の達成感に酔いしれた。

富士山とは全く違う山だけれど山への度胸をつける、
そして自らの限界を打ち破るという意味では前哨戦として大成功だった。
夏に二人で最高峰に立つ日を夢見て、誓いのソフトクリームで乾杯をした。

ルートレビュー

難易度:A
稜線は鎖と岩場の連続。
見晴らしでは滑ったら崖下へ転落するような場所や
天狗岳では垂直気味の長大な鎖場もあり
ハーネスやヘルメットは必須と言えます。

体力度:C
標高1104m 標高差670m 平均斜度16.6°
登り3:40(2.3km) 下り3:30(3.9km)
山頂までの平均斜度は剱岳の早月尾根(17.2°)並み。
ですが距離は短く腕を使う工程が多いため足への負担は少ない方です。

展望:A
見晴らしや大のぞきからは自分が凄い場所に居ることが分かり
危険度に見合う喜びは得られます。
一般登山道でも大の字をはじめ展望ポイントはいくつかあり
初心者でも楽しめる山です。

総評:B
登って良し、眺めて良し。
幅広い楽しみ方ができる山です。

締めの一言
限界は自分が作っているもの。
挑戦することが大事!

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