百名山

百名山2座目:富士山御殿場口~Rising Force~(10.09.26)

同期『今週末フジサンイク?』
唐突な連絡。
そりゃいつか最後のルート行くとはいったけど前回からまだ二か月だぞ・・・
とりあえず詳しく聞いてみよう。

俺『なんすか急に』
同期『イヤー飲み会で富士山の話したら後輩イキタイって言うからツレテコウトオモッテサ~』
俺『いやそんな二次会みたいなノリで行ける場所ちゃうやろ。てか今登山道開いてるのか?』
同期『イケルッショー』
俺(ダメだこいつ・・・)

調べてみると山小屋などは閉鎖はされているものの
特に法で規制されているわけでもないので自己責任で登っているようだ。
山小屋への逃げ場はないので悪天候への備えはよりしっかりしておかねばならない。

そして最後のルートというのが御殿場口。
他の登山口と同じ五合目と名乗りながら標高が1000mも低い詐欺のようなルート。
3時間歩いてやっと富士宮と同じ標高になるという富士山屈指のロングコースだ。

富士登山は『4回目』、求められるのは『体力』。
要するに最も『Fourth/Force』が必要なコースというわけだ。
最後の富士を華麗に締めくくるべく、夜の御殿場へと駆け出した。



御殿場駐車場の前夜。
夏は山頂を目指すヘッドライトが山道を彩るのだが
秋となると漆黒の山体が聳えるのみ。

愛鷹山の夜景と共に車内で一夜を過ごす。

翌朝の日の出。
箱根連山とおぼしき火口から太陽は昇る。

朝日は富士の山頂を紅く染めてゆく。これがモルゲンロートってやつか!

陽光は雲で拡散し爆発する。
本当に夜明けの瞬間は息を飲む美しさだ。何度でも魅入ってしまう。

太陽から十分力を貰った。さあ、出発だ!

同期『イクゼ!アノ太陽へムカッテ!』
後輩『俺たちの戦いはここからっすね・・先輩』
俺『いやそっち逆、逆!』
単純な野郎共は太陽のパワーに引き寄せられてしまったようだ。

全く、無駄な体力を使ってしまった・・・
あらためて富士への道を辿る。



静かなる山麓。
人影はチラホラ居るがあの満員電車のようだった富士山の面影は微塵もない。
そして標高が低い分、山体の迫力をより大きく感じることができる。
いいじゃないか、御殿場!秋富士!

リヴァイアサンのような雲が降臨。
相変わらず富士の雲は魅せてくれる。

小屋締めの作業者と思わしき人がブルに乗り山頂を目指している。
登山道はずっと砂地で一歩進んでも半歩下がり地味に体力を消耗する。
楽そうでいいなぁと恨めしそうに見ていると奥から降りてくる下山者が話しかけてくる。

下山者『君富士山は初めて?』
俺『いえ4回目ですけど?(ドヤァ)』
下山者『こっち下山道なの知らないの?w』
俺『Σ( ゚Д゚) ゴ、ゴテンバハハジメテナンスヨ・・・』

どうりで進まねぇわけだよ!(怒)
よく見たら右のほうにジグザグに切ってある道が見えるじゃないか。
下山&ブル路である大砂走りを必死に登っていたのだ。
というかブル通ってる時点で気づけよ俺・・・ドヤってる場合じゃなかった。

誰かの落とし物。砂地だとより目立つな。
このあたりで同期後輩コンビから少しづつ遅れ始める。
というか後輩君初心者のくせに早いぞ・・・
移動中に先輩面してドヤってる場合じゃなかった(2回目)

雲を越えてようやっと宝永山を下に見る。
江戸時代の噴火の際にできた火口の淵となるピークだ。
ここでやっと富士宮五合目と同じくらいの標高。
うーんやっぱり損した気分がするぞ←

7合目の小屋は完全封鎖状態。
トイレすら使えないので腹痛が起きたら生まれたままの姿で自然と一つになる必要がある←
砂走り逆走で若干股関節にダメージを負いペースが上がらなくなったので
同期後輩を先行させ暫く一人で休むことにした。



30分程休んでいたら同期達は見えなくなってしまう。
少し進んだ先にある砂走館は重機による小屋締めの真っ最中だった。

補強用の窓枠を取り付けている様子。
人がいてちょっと安心。さて、ここから先はリアルソロ登山だ・・・
でも今までの富士山経験があれば、きっと乗り超えられるはず。

8合目を過ぎたあたりには荒廃した小屋跡のようなものが。
管理が行われない小屋は・・・こうなるのか?

一方そのころ同期達は先に山頂に到達。
ガスガスで寒い山頂で1時間程俺をまってくれていたようだ。



さっきまで晴れていたの山頂付近は霧の中へ。
気圧が下がりまた具合が悪くなり始める。
と、ここで同期達が降りてくるのを発見。遅すぎてすまねぇな(´Д`)
一緒に降りようかと思ったけど折角ここまで来たしソロで山頂を目指すことにした。

霧は更に濃くなり周囲はほとんど見えない。
この道で合っているのか?という不安な気持ちと、
自然に包まれたかのような無音の心地よさがせめぎ合うなんとも言えない感情。
とりあえず体調は過去一番調子がいい。このまま進むのみだ!
五里霧中を無我夢中に歩き続けると・・・見慣れた鳥居が目の前に現れた。

同期達に遅れること1時間半。
4度目の富士山頂を踏破!!

浅間神社も完全封印。
霧と相まって荘厳な雰囲気を纏う。

周囲を散策すると奥の方に鳥居を発見。
剣ヶ峰まで行きたいけど時間・天候・体力共にもう無理だな・・・
今回はここを山頂としよう。
鳥居の氷結具合が夏とは別世界になりつつあることを予感していた。
天の道を征く男のポーズで記念撮影し、来た道を素早く引き返した。

下山中はひたすら霧との孤独な闘いが始まる。
道だけは間違えないように確実に案内板を辿る。
登りの時と状況は同じだけど踏破したという安心感で心は晴れやかだった。
6合目付近で休憩していた同期達とも再開。
太陽も落ちようかという17時40分に、三人で一緒にゴールを切る。
車内に倒れこんで気絶するのにそう時間はかからなかった。

これで富士山全ての登山道を制覇。
同じ山なのにルート毎に見えたもの、感じたもの、得たものは異なっていた。
『物事を様々な視点から見れば新たな発見がある』
この一つの事実に気づかせてくれたのが、
自分が富士山を登った意味だったのかもしれない。

ルートレビュー

難易度:C
登山道の難易度は他のルートと変わりありませんが
秋季は山小屋が閉鎖されているため天候&トイレ対策を装備で賄う必要が出てきます。

体力度:B
標高3713m 標高差2274m 平均斜度13.5°
登り8:20(9.5km) 下り3:30(7.5km)
斜度はそうでもないですが標高差は剱の早月尾根や甲斐駒の黒戸尾根に匹敵します。
前泊しても標高の低さから高地順応はあまり期待できず
全体を通して気圧の変化が大きいため体力が削られやすい難ルートです。

展望:C
標高差のおかげで登山口から見る富士の大きさは圧巻です。
南東向きで夜明けが確実に見れ、愛鷹山や箱根連山なども見えます。
コースタイムが長くなる影響で朝発の場合山頂到着は午後となり
眺望がなくなる可能性が高いため深夜発か宿泊登山がお勧めです。

総評:C
最長かつスタートからゴールまで独立した登山道のため
他のルートで起きがちな混雑が無い所が最大の良さです。
駐車場も唯一マイカー規制が無いため自由な山行プランを実現できます。
日帰り弾丸だとデメリットが多くなりがちなので
時間をかけてゆっくりと向き合ってみると
富士山の本当の良さが見えてくるかもしれません。

締めの一言
しっかり成長させてもらったぜ。ありがとう富士山!

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