百名山

百名山47座目:槍ヶ岳~Seventh Heaven~(14.09.22 Day.2)

前哨戦の焼岳はこちら
Day.1の奥穂高岳はこちら。

暗いテントの中で目覚める朝。
とりあえず頭痛は治まっており高地順応は無事成功したようだ。
顔がメッチャ浮腫んでいること以外は調子がいい←
今日の目的地は憧れ中の憧れである槍ヶ岳。
その名の通り天衝く槍のような鋭い穂先を持った名峰だ。

槍ヶ岳は美ヶ原で初めてその姿を目にした時にも書いたが
『一生に一度は富士山に登りたいというのが庶民の願いであるように、
いやしくも登山に興味を持ち始めた人で、
まず槍ヶ岳の頂上に立ってみたいと願わない者はないだろう。』
と、日本百名山の著者・深田久弥さんは語る。

登山を始めてから様々な人と会い
槍ヶ岳の素晴らしさとカッコよさをこれでもかと説かれてきたさ。
そんなん憧れるなってほうが無理やん( ´Д`)
俺もようやくその頂に立てる日がやってきたのだ!

槍ヶ岳登頂には東側の上高地から槍沢を登るルート、
そして西側の新穂高温泉から左俣林道を進み飛騨沢から登るルートが一般的だ。
奥穂高岳からはというと槍ヶ岳までは稜線を介して繋がっている。
だがその稜線には涸沢岳→北穂高岳南峰→北峰→南岳→中岳→大喰岳
と6つものピークがありその途中には『大キレット』という
V字状に切れ込んだ岩稜の難所を越えなければならない
国内屈指の難易度を誇るルートになっている。

まさか最初から最高難度のルートを歩くことになるなんて誰が予想しただろうか。
自分独りで計画していたら絶対に選ばなかったであろうルート。
『恐れるな、試練は乗り越えられない者に襲い掛かりはしない!( ゚д゚)و ̑̑』
と、強い誓いを胸に抱きテントから転がり出る。
7つめの天国を目指す旅が始まろうとしていた。



4:30に起床し出発の準備を進める。
5:00頃にテントの片づけを終え奥穂方面を眺めると
夜明けを狙う登山者のヘッドライトが列を作る。
こんな素晴らしい場所に居るのなら我々も当然夜明けは狙わなければ。
まずはウォームアップがてらひとつめのピーク・涸沢岳への一歩を踏み出した。

山荘から約30分であっさり登頂。
まずはここで夜明けを待つことにする。
その前にちょっくら景色覗いてみよう・・・

うおおぉぉぉぉ!!(  Д ) ゚ ゚
今日歩く稜線が全部見える!

タクヤ『これはアカンやつや・・・』
ヒロシ『どこ歩くんだろう・・・』
野木さん『自信なくなってきたな・・・』
俺『さみぃ←』
感動・期待・不安・悪寒が入り交じり平常心になる面々。

奥穂の頂にも夜明け待ち登山者が続々登頂。
そして・・・

5:50。雲海を切り裂く夜明けの刻。
全身に熱を浴びて体が温まってゆく。
周囲の人々の感嘆の声に溢れる頂。
お天道様の有難みを知る瞬間だ(-人-)

東面に太陽が当たり登山道のエグさもさらに強調。
一段と光り輝く深く切れ込んだ谷・・・まさかあれがかの有名な大キレット?
歩ける気がしない( ´Д`)

ええい、ここまで来たらビビってもしょうがねぇ!
俺たちの実力を信じて6:00に涸沢岳を出発!( ゚д゚)b



涸沢岳の下りからいきなりチェーンの直滑降が始まる。
全員で一気に降りると危険なため順番待ち。
一人降りたら声をかけ後に続く。

涸沢岳から北穂高岳の稜線。
先に降りた二人の位置から高度感が感じ取れるだろう。

チェーンのない場所でも割と斜面はきつく手をつきながら慎重に降りる必要あり。
砂利を滑らせて岩を落とすと人に当たる恐れがあるのでその時は
『ラク!!』と大声で叫んで下の人に知らせることがこういった岩場でのマナーだ。

危険な場所ほど朝日が俺たちを輝かせるのさ←

まだまだ先は長い・・・
とりあえず大キレットさえ越えれば普通の登山道になりそうな雰囲気ではある。
気を抜かずに行くぞ!

突然の霞が槍を覆い隠す。
『お前らは果たしてここまで来れるかな?』と挑発する槍。
昨日から聞こえる幻聴はきっと好山病のせいだ←

ふと右を見ると雲海の中に漂う八ヶ岳連峰。
過去登った蓼科山も十分標高あるのに北アルプスの前では遥か格下に見える・・・
俺、こんな所まで来れたんだな(´;ω;`)



7:45に2つめのピーク・北穂高岳南峰に登頂。
何本も鎖登って結構進んだ気もするけど地図見ても進んだのは1キロ程度。
この距離に2時間弱かかるってどういうことだよ・・・(‘A`)
槍にたどり着くのはいつになるやら。

しかしここからの景色は別格。
手前の北穂が消え大キレットから一気に立ちあがる鋭い槍の山容は
マジで来てよかったと思わせてくれる絶景。

さぁ次は北峰へのチェーンクライム!

ここでふと振り返ると凄まじい光景が!!
連なる前穂高岳・奥穂高岳・涸沢岳。
その麓にある抉り取られたかのような涸沢カール。
昨日あそこに居た俺たちはちゃんと進んでいるんだと安心し再び鎖と闘いつづけた。

8:30に3つめのピーク・北穂高岳北峰!
涸沢岳から目の前に見えたのに思ったより時間かかったなぁ・・・

苦難を乗り越えた野郎共のガッツポーズの向こうに
憧れの頂が見える。



北穂高岳を降りたすぐ下には北穂高小屋がある。
ザックを下ろし暫し休息の時を楽しむ( ˘ω˘ )
しかし皆の表情は硬いままだ。だってさ・・・

この先大キレットだもん(‘A`)
行く先を見て立ち尽くす皆の背中が緊張感を物語っている。

意を決して9:00に北穂小屋出発!
まずは一気に200mほど下降していく。
このあたりから槍から来た登山者とのすれ違いが発生し始める。
崩れやすい岩場のあちこちで『ラク!』の声が響き全く気が抜けない(((°Д°)))

鎖場を攻略するタクヤ。
こんな感じの鎖が延々と続く。

ある程度降りると『飛騨泣き』と呼ばれる難所に。
飛騨側に落ちたら命はないという意味らしい( ꒪﹃ ꒪)
昔は滑落者が多かったそうだが今は鎖とステップが用意され
難易度はかなり下がっており楽しみながら歩ききることができた!

再びスリッピーな砂利道を急降下。
結構下ったしそろそろ大キレットかと思いきや・・・

また上がるぅ!!( ゚д゚)
もう登っているか下っているかわからない状況に気が滅入りそうに。
俺たちにできることは進むしかねぇ!

10:30に先ほどの岩峰のてっぺんに立つ。
Hピーク?と書かれたペイント発見。
地図を見ると長谷川ピークという名前があったので多分ここだな。
笠ヶ岳がよく見える絶景ポイント!



長谷川ピークから進む先を見下ろすとようやく大キレットが見えた。
あともうひと頑張りだ・・・

11:15大キレット到着!
振り返って稜線の高低差に若干引きつる。
いやー我ながらよくこんなとこ歩いてきたな。。。( ´Д`)
というか登山道作った人たちが凄すぎるよ。

久々に落ち着ける場所に来たので小休止。
ここでも笠ヶ岳の雄姿が俺たちの心を支えてくれたのは言うまでもない(-人-)

ここから再び200mほど標高を稼いで次なる頂へ。
今まで歩いてきた道よりは遥かに歩きやすく
最後の梯子までスルスル進んだ。

12:20獅子鼻展望台到着。
やったんだ・・・俺たちは憧れの大キレットを歩き切ったんだ!(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

すぐ近くには南岳小屋。
久々の小屋と穏やかな雰囲気に変わった登山道を見て
全身の力が抜けていくのがわかった(‘A`)



小屋で昼飯を喰らった後、
すぐ近くにある4つめのピーク・南岳へ13:15登頂!
やはり午後になってから雲が出て景色が陰り始める。

次なる頂へ向けて歩き始める。
ここで緊張の糸が切れたのと体が酸素を使い果たしたようで再び高山病発動(‘A`)
穏やかな登山道ではあるが思ったより急斜面が続き皆に遅れ始める・・・

14:40に5つめのピーク・中岳踏破!
完全に雲の中で周囲はなにも見えなずただただ辛い。
景色から力を借りていたことを痛感する。

再び歩き始めるとちょっと雲が取れ突然槍の穂先が!!
こんな近くまで来ていたのか・・自然と心拍数が高まる。
決して高山びょry

15:30に6つめのピーク・大喰岳(おおばみだけ)来たぞコラ!!( ´Д`)
チンタラしている俺を休みながら待ってくれる二人。

槍ヶ岳ちけええええ(  Д ) ゚ ゚
山荘とテントでその大きさがより際立つ。
はやく・・あそこに立ってみたい・・・

雲はかぶったり晴れたりを繰り返して槍ヶ岳の稜線を彩る。
割れそうな頭と震える足に力を込め気力を振り絞って歩く。



16:00ジャストにビリッケツで槍ヶ岳山荘テント場に到着( ´Д`)
野木さんが俺と同じグロッキー状態で倒れており
タクヤ&ヒロシは先に山頂へ向かってしまったようだ。
野木さんは登頂は明日に回すということだったので
俺は少し息を整えた後二人を追った。

テント場から槍ヶ岳。
もう勝利は目の前だ。

テント場から歩いてきた稜線。
本当によく歩いたよ俺。
じゃあ、行ってくる!!

穂先へのラストクライムが開始。
近づくと思ったより高さはなく
しっかりペイントや梯子もかかっており案外スルスル登れてしまう。

先行する二人をハイパーズームで捕捉。
見た感じ左が登りで右が下りの一方通行になっているみたいだな。
梯子はだんだんと角度が増え上に行くほど
周囲の岩が見えなくなるため恐怖感は増してゆく。
最後の梯子はほぼ垂直で左右に空しかないのでめっちゃ怖い(((°Д°)))
進む先だけ見て最後の段に手を伸ばし、体を押し上げる。

時刻は5:00。
7つめのピーク・槍ヶ岳の祠が目の前に現れた。
その瞬間に精魂尽き果て、膝から崩れ落ちる(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

クールに佇む二人は背中で語る。
(よくがんばったな。)
グールになりかけた俺は無言で語る←
(お前らのおかげでここまで来れた・・・本当にありがとうな!!)



雌阿寒岳では1つの標識を3人で。
槍ヶ岳では3つの標識を1人づつ。
One for All, All for One!

周囲の山々は雲に包まれるが槍の頂は
俺たちのために展望を残してくれていた。

この嬉しさ、飛ばずにはいられない!!
ジャンプで槍ヶ岳のフォルムを再現←

さて、今日はこのくらいにして降りますかね。
また明日、ここで最高の夜明けを迎え撃とう。

17:30テント場帰還。
タクヤ『今日もおつかれ!』
3人『ヴェイ!!!』(‘A`)つ🍻⊂(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
昨晩学習し今日はノンアルにしました←
いやもう嗜好の一杯。うますぎて言葉にできん。

周囲を見ると沈みゆく夕日が雲海を染める。
天国のような景色に言葉を失う( ゚д゚)

仲間と共に過ごす絶景。
最高の瞬間だよ。

頼む太陽、まだ沈まないでくれ!
つまんでみても宇宙の法則は止まらず雲の中へダイブしていった。
また、明日待ってるからな!( 」゜д゚)」

さて、完全に暗くなる前にテントを設置せねば。
2回目となるとチームプレーにも磨きがかかり昨晩の半分程度で完成した。

割と全員体調良かったので料理対決ROUND.2開幕。
各自が腕によりをかけて飯を作り始めるがここでも野木さんの妙技が炸裂。
サブメニューとして出てきたのはなんとフリーズドライ化したホタテ。
これに水をかけて暫く放置するとなんと生のホタテ貝柱として復活を遂げるのだ。

野木さん『これにわさび醤油をかけて・・どうぞ!!(^-^)』
3人『・・・うめぇえええええええ!!!( ꒪﹃ ꒪)』
山で生の海鮮が食えるなんておもわないやん?
テント内にワサビの香りが充満するなんてありえへんやん?
意表を突いた食材のチョイスに感動と絶賛の嵐。
もう我々が何作ったか記憶にないくらい
野木さんの圧勝でROUND.2は幕を閉じた←

憧れの大キレットを歩いてみて。
やはり難易度は高く恐怖と緊張感はあるけれど一般ルートなだけあって
ホールド・足場・鎖場・マーキングはしっかりしており
結果的に楽しさの方が勝った!( ・ㅂ・)و
恐怖心さえ克服できれば普通の登山道として十分通過可能。
もちろん天気が味方してくれることが大前提ではある。
強風や雨の時は牙を剝いた別の姿を見せるだろう。

ともあれ好天と絶景があれば人は実力以上の力を発揮できるはず。
明日も今日のような空と高山病の回復を願わずにはいられない。
感情が激動した一日を終え、寝袋へと意識を手放した。

ルートレビュー(山荘~槍ヶ岳)

難易度:S
涸沢岳~獅子鼻展望台までの区間は
痩せた尾根と連続する鎖場が6時間も続きます。
滑落はもちろんのこと落石への警戒、
自分が落とさない配慮も含めずっと緊張感を保たねばなりません。
更に北穂高岳南峰以外にエスケープルートがないため
天候の急変に対応できないのも難易度に拍車をかけています。
事前の予報をよく確認した上で心を落ち着けながら確実に進みましょう。

体力度:B
標高3180m 標高差191m 平均斜度1.7°
登り10:20(6.5km) 下り0:30(0.1km)
山荘からの標高差と直線距離は大したことないのですが
累計標高でいうと登り738m,下り640mと一山分程度の高さあり。
更に3000m級の低酸素状態でずっと鎖の登下降という
全身運動を繰り返すため想像以上に体力を消耗します。
また難易度によるプレッシャーも大きいため強い精神力も必要とされます。

展望:S

次々と襲い掛かる岩峰、雲海の八ヶ岳、見守ってくれる笠ヶ岳、
抉られた涸沢カール、迫りくる槍ヶ岳。
最初から最後まで凄まじい景色のオンパレードに狂喜乱舞します。

総評:S
体力・技術・度胸・そして好天を呼び寄せる運。
すべてが揃って初めて歩けるルート。
一度歩けば一瞬で脳裏に焼き付き一生語れる宝になります。

締めの一言
漢達の憧れと情熱は、大キレットも貫くのさ!

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