百名山

百名山55座目:高妻山~太陽のカウントダウン~(15.05.26)

SNSの集い第12弾。
九州遠征でソロ活動が続いたので
久々に賑やかな登山をしたい欲が湧いてきた。
遠征後早速SNSメンバーに連絡を取り二人の同行者が決定。
山を決めるにあたっての条件は3つ
➀アルプスはまだ雪に閉ざされているため不可
②俺を含む全員が未踏
③なるべく近く
この条件を満たすのは実質一つ。それが高妻山(たかつまやま)だった。

高妻山は長野県北部にある2353mの戸隠連峰の最高峰。
周辺には北信五岳(妙高山・黒姫山・飯綱山・戸隠山・斑尾山)
という目立つ5つの火山群があるのだが
なぜか連峰最高峰ではない戸隠山の方が選ばれてしまっている。
これは高妻山が奥まった場所にあり麓から見えないためだ。

そのため百名山としては少々地味な印象が拭えないが
選ばれている限り近づけば素晴らしさが分かるに違いない。
久々の再会となるメンバー二人に九州旅の土産話と
高妻山への期待を語りながら上信越道を疾走し麓へと向かったのだった。



前夜を道の駅にて過ごし
戸隠キャンプ場ピットインの7:00出発!

キャンプ場を通り過ぎると戸隠牧場が広がる。
あの正面に見えるのが高妻山!・・・ではなく手前の五地蔵山なのだ。
ここまで近づいても全く姿を見せてくれないのが隠れた名山たる所以。

今回集まってくれたメンバーは
仙丈ヶ岳を一緒に登ったよーこちゃんと
御嶽メンバーであるえぐっちゃんの二人。
どっちの山もトラブルありでまだ二人とは一緒に山頂を踏めていない。
今日こそ楽しんで共に頂に立つぞ!( ´Д`)

山頂へ至る道は尾根沿いの新道と谷沿いの旧道の二本。
今回は登りは新道、下りは旧道という周回ルートで歩くことにした。
まずは沢を渡り新道である弥勒尾根へと向かう。



今回は女子二人で華やかなので
景色だけでなく二人もたくさん被写体にしていきます(゚∀゚)←

尾根を半分ほど登ると早くも視界が開け始め
背後には一つめの北信五岳・飯綱山が飛び込んでくる。

山体右側にある瑪瑙山(めのうやま)を頂点に戸隠スキー場が切り開かれる。
飯綱山なのに戸隠名乗ってるのが気に入らねぇな←

10:30に尾根を登り切り旧道との合流点・六弥勒に到着し小休止。
高妻山はかつての修験道の名残で道中の小ピーク10ヶ所に
石碑が置かれそれぞれに名前が振られているのが特徴。

石碑の半分は旧道側にあり避難小屋の一不動から始まり、
二釈迦、三文殊、四普賢、五地蔵と続き現在地の六弥勒へ。
この先の尾根から七薬師、八観音、九勢至、十阿弥陀(山頂)と続いているのだ。
我々も修験者になった気分でこの先も頑張ろう!(-人-)



六弥勒を過ぎると突如現れる残雪織り交ざる頂、、、あれが高妻山か!( ゚д゚)σ
高々と頭をもたげる渋くてカッコイイ山じゃないか!

隣には頚城山塊(くびきさんかい)の焼山、火打山、
そして二つめの北信五岳・妙高山が連なる!
日本海沿いの山は5月ではまだ全然雪山の様相。

このあたりから高妻山の稜線にも残雪が現れ始める。
だがしっかりとしたトレースの平坦路で恐怖心はなく
楽しんで歩く二人の笑顔がまぶしい(^-^)

稜線の左手を見ると三つめの北信五岳・戸隠山の鋸のような稜線。
そして奥には北アルプスと思わしき白き山脈が続いているが
高妻のピークがそれをうまいこと隠している・・・
これは間違いなく絶景。早く頂上から全貌を拝みたい!(*´Д`)



修験の石碑を3つ通り過ぎ九勢至に到達。
あとはこの稜線を登り切れば念願の頂!

山頂直下まで来ると四つめの北信五岳・黒姫山!
かすかに後ろに見えてるのが最後の北信五岳・斑尾山かな?
5つすべての頂が見え撮れ高はバッチリ、さぁあとは山頂を楽しむだけだ。

山頂まであと僅かという所で試練が立ちはだかった。
最後の急登に雪がべったりと残っていたのだ(((°Д°)))
角度はスキー場の上級者コースくらいあるだろうか。
流石にこれを登山靴だけで登るのは危険すぎる・・・

よし、今こそ念のため用意していたアイスツールの封印を解く時!
二人は軽アイゼン、自分は冬季赤城山にて大活躍してくれた
12本アイゼン+ピッケルを携え山頂への最後の一歩を踏み出した。

しかしアイスツールを使ったからといって登るのは簡単ではなかった。
12本アイゼンとピッケルを持っていた自分はともかく
軽アイゼンの二人は安定した足場を作れずちょくちょく滑りながら進んでいた。
それでも左にある笹の枝を掴みながら黙々と登る頼もしいえぐっちゃん。
これでどうにか山頂には行けそうかなと、よーこちゃんの様子を見ていたら

よ『もう無理・・・(TДT)ウワーン』
と、突然泣き出してしまった。
自分はこの状況をチャレンジングに楽しんでいたんだが
彼女は恐怖を感じていたことに全く気づけなかった・・・

よ『私下で待ってるから二人で行ってきて(´;ω;`)』
またこのセリフを聞くことになるとは・・・
流石に二回も一緒に登頂できないのは避けたかったので
落ち着くまで傍で様子を見守る。

俺『大丈夫?、山頂あとちょっとだしさ、もう少しだけ頑張ってみない?』
よ『・・・うん、泣いてちょっとスッキリした、頑張る!( TДT)و ̑̑』
俺『よし、その意気だ!(。-`ω-)b』

彼女は気を持ち直し前に進む選択をしてくれた。
ゆっくり先攻して雪面に足場を作り、
枝を掴む場所を指示しながらなんとか引っ張りあげることに成功した。



急登を越えた先は嘘のように雪が消え普通の登山道に戻っていた。
そして正面には白馬鑓ヶ岳・杓子岳・白馬岳の白馬三山!
念願の北アルプスの稜線を拝め、残雪で恐怖を感じた我々に笑みがこぼれた。

そして13:30、十阿弥陀の石碑に到着!

高妻山頂踏破!!/ ^o^\
やっとこの二人と頂に立てた。
ここまでの道のりはいろんな意味で長かったよ・・・
なんか俺も泣きそうになった←



頑張った二人を労うため豪華な山飯タイムだ!
荒船山でも作ったカルツォーネを焼き尽くし二人をもてなす。

美味しそうに食べてくれる二人。
守りたい、この笑顔( ゚д゚)←

締めはえぐっちゃんが用意してくれたコーヒーで・・・

至高の乾杯!
やっぱ山で飲むコーヒーが一番うめぇわ(´ω`*)



腹も膨れたのであとは撮影に興じる。
雪と雲が合わさり神々の領域たる雰囲気を放ち始める白馬三山。
・・・雪が解けたら今年こそ絶対に行ったらぁ!( ・ㅂ・)و ̑̑

山頂から西方面には隣の乙妻山への稜線が続いている。
その奥に見えるのが雨飾山と焼山。
実はこの先には十一阿しゅく、十二大日、十三虚空蔵
という石碑と共にエクストラ修験道が続いているのだ。
地図では破線ルートとなるこの稜線。
もう少し余裕のある時に全てを修験道を踏破してみたいものだ。

東方面は歩いてきた稜線と黒姫山。
撮れ高は十分だな。さぁ再びこの稜線を歩いて帰ろう。
撮影と食事でゆっくりしすぎこの時点で時刻は15:00。
コースタイム4時間くらいだし
下山は日没と同タイミングになっちゃうかな・・・(‘A`)

問題なのは再びあの残雪急斜を通らないといけないことだ。
斜面は登りより下りのほうが恐怖心を感じるもの。
よーこちゃんも歩き出した時点で明らかに表情が引きつっている。

まず俺が先行しアイゼンでしっかりステップを切って接地面を作り
彼女のすぐ下について滑った際のアシスト体制を作りながらゆっくり下山。
なんとか1時間ほどかけて二人を急登から下山させることに成功した!(*´Д`)b



九勢至付近まで戻ってきた所で太陽が高妻山頂に灯る。
この時点で時刻は16:30を回る。
幸いにも5月末の日の入りは19:00と長い。
まだ。。。大丈夫だよな?

六弥勒から先は避難小屋で携帯トイレを使う可能性を考えたのと
未知のルートを通りたいという欲が混ざり予定通りに旧道を選択。
五地蔵山の頂から西日に照らされる
妙高と黒姫山を眺めていたら時刻は17:00を過ぎていた。

五地蔵からの稜線は4つのピークが続いていて
想定外に時間がかかり一不動避難小屋に付いたのは18:20だった。

あと30分・・だと?
日没へのカウントダウンが刻々と迫っている(((°Д°)))
まぁ残り3キロだしヘッドライト付けながら1時間で歩ききれるはず・・・
だがその考えは甘かった。
旧道は沢筋の修験道。二つの滝を越えるための鎖場や渡渉の連続する
難易度の高いコースが続いていた。
こんな場所で二人のアシストをしながら歩いた結果、行動が長引き道中で完全に日没。
滝を越える鎖場をクリアしたタイミングで周囲は闇に閉ざされてしまう。

まぁ地図を見る限りもう鎖場無さそうだし登山道外れなければ大丈夫だろう・・・
と思ったがそれも甘かった。
この先の登山道は残雪だらけで看板やテープは剥がれ落ち荒れ果てており
ルートファインディングを要する状況になっていた。
ちょこちょこ残雪の急斜面がありアイゼンをつけ外しする状況が出てきたり
脚を滑らせて滑落しかけたよーこちゃんを必死で止めたりと
段々まずい状況に追い込まれていた。

そしてこの後に現れたのは沢を覆う巨大な残雪。
登山道を完全に覆い隠している上、
踏み跡もなくどっちへ向かえばいいかわからない・・・
とりあえずカンに任せて沢の左岸に降りたがその先に道は無かった。
地図確認して登山道は右岸方面にあると解ったが、
ヘッドライトの照度が足りず右岸が見えない・・・
確認しようとして進もうとした瞬間足が止まった。
残雪の中心が沢の水でくりぬかれるように溶けていて
スノーブリッジになっていたのだΣ( ゚д゚)
うっかり踏み抜けば沢に落ちて冷水の中に流されるのが明白だった。
もう、動けない。。。ここでようやく気が付く。

俺『えーと・・俺たち遭難してる、、、よな?(‘A`)』
二人『だよね・・・(´;ω;`)』

焦りで喉が渇いていくのが分かった。
ビバークという選択肢が頭をよぎる。
もう一度冷静になって地図を見返すと牧場まではあと少しの距離。
ここさえクリアすれば絶対戻れるはず、、、諦めてなるものか!
俺『ちょっとルート探ってくるからここで待ってて』
盛大に死亡フラグを立てつつルートファインディングに出る。

まず右岸に渡るため残雪を一旦登り返し雪の暑い層を探して
足元をストックでどつきながら崩れないのを確認しつつ
ビクビクしてスノーブリッジを渡り切る。
そのあとは右斜面を登り降りしひたすら捜索を続けた結果・・・
雪渓の切れ端に登山道の看板発見!( ;∀;)
・・・マジで生きた心地のしない30分だった(‘A`)
二人にも俺のトレースを辿りブリッジをどつきながら渡るように指示して合流。
一難去ったがその先の渡渉ポイントも同じような状況が続いており
三人で協力しながら闇の中道を切り拓き続けた。



その後は無事牧場に合流し駐車場に生還を果たす・・・時刻は21:30。
往復14時間半というありえないコースタイムをたたき出す。
・・・ちょっとこれは過去最高にやらかしてしまったわ(‘A`)
今回俺が取るべきだった行動は

①山頂手前でよーこちゃんは待機
②山頂取ったら素早く戻る
③通ってきた新道で下山

これが正解。
なのに俺の判断はどうだ?

①恐怖を感じていたよーこちゃんを無理に登らせる。
(二回も登頂できない状況にしたくなかった)
②登頂まで時間を要したにも関わらず山頂で1時間半浪費。
(二人の恐怖をやわらげたかった)
③未知のルートを歩きたいがために下山に危険な旧道を選択。
(避難小屋で携帯トイレを使う可能性を考慮)

自分のワガママと慢心で、
選んじゃいけない選択肢を選び続けていた。
御嶽山での一件は自然災害で予測できないし致し方ない部分はあるが
今回の戦犯は完全に俺。
怪我や失うものはなく無事降りてはこれたけど
またしても楽しい登山とは程遠い結果となってしまった。
二人はさぞ怖かったろう。。。申し訳ない思いで一杯だった。
後日キャンプ場で聞いた話によると
登山道の整備が入るのは6月になってからだそうだ。
それまでは高妻山は残雪に荒らされ放題の登山道となる。

今回学んだのは以下の4つ。
①山開きが行われてない山は冬山と同レベル。
②残雪期は急登、沢筋のある山を控える。
③ビバーク装備、照度の高いヘッドライドを買う。
④何とかなるだろっていうソロ登山のメンタルは捨てる。

後日グループ管理人のまみさんにもガッツリ怒られました(‘A`)
反省としてしばらくSNSメンバーとはしばらく距離を置くことにしよう。
もっと謙虚になって山や同行者と
しっかり向き合えるようになってから出直してきます(-人-)



ルートレビュー

難易度:B
山頂直下には残雪急登があり12本アイゼン+ピッケルが必須な角度。
旧道は鎖場も多く沢筋は残雪で埋まっているため
ルートファインディング能力が求められます。
5月末は冬山と同レベルと考えましょう。

体力度:C
標高2353m 標高差1180m 平均斜度11.3°
登り4:55(6km) 下り4:15(6.3km)
弥勒尾根は細かいピークが連続しており
距離の割には時間がかかり体力の消耗は大きめ。
累計標高差は1500m近くになります。

展望:B
五地蔵山の手前付近から視界が開け始め
北信五岳や頚城山塊の山々が取り囲みます。
山頂からは乙妻山への稜線の先に
白馬三山などの後立山連峰の山々を一望できます。

総評:B
北信五岳と北アルプスの織りなす景色が壮大な隠れた名峰。
反面距離だけ見ると難易度に油断しがちで
潜在的な恐ろしさを秘めた山と言えるでしょう。

締めの一言
失敗から得るものは大きい。この教訓を次に生かす!

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